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ジャミーの効能

「ジャミー」 ジャムのことをそう曽祖母は言ったそうだ。 紅茶には決まってジャムを入れた。 バラのジャムを。 ハイカラだったんだなあ、ひいおばあちゃん。*** その日、いきなり電車の中で怒鳴られた。 といっても、怒りはわたしに、というより、車内全体の虚に向けられていた。 ひとりの怒鳴り声が響き渡る車内。空間がどんどん狭く息苦しく、いびつになっ

ホタルブクロ

おしりのポケットに手を入れて歩くあなた 学生のような甘酸っぱい影を残して どんなに辛い道を歩いてきたのか 大きな笑顔でかくしている わたしとのひととき 失くしてしまっても もらった言葉を 胸にいだいて 口をむすんで眠る

露天風呂の神

長崎県波佐見町の、とある温泉。 お湯がとろっとしていて、気持ちがいい。 ご近所さんでにぎわう炭酸風呂を横目に、空いている露天風呂につかる。 岩の間で体がうまくおさまるところを探していると、子どもがひとり入ってきた。 短く切りそえられた髪とキリッとした顔つきに、はじめは男の子かな? と思ったが、女の子でした。 音を立てずにお湯に入り、ちらっ

言葉にならない

「……言葉にならないことについて、どう思う?」 と、そのひとは言った。「……言葉に、ならない……」を受け止め、ちょっと興奮したわたし。杯の日本酒をぐいっと飲み干した。 島根県の西側、吉賀町柿木村(よしかちょう・かきのきむら)にお邪魔していた。 急遽時間をつくってくれたそのひとは、山と川と畑と田んぼに囲まれた場所で本やCDを売る『音鳴文

台所にて

じゃがいもの芽を とりながらまた浮かぶ あのことばこちらが悪い いけなかっただけどもさ あの態度こちらのそれも 問題でしょうああもう!不機嫌の源流が とめどなくこういうときは たまねぎの皮すら素直じゃない爪をたてて 引き剥がすお出汁だけが 頼りですお味噌をときながらふくれっ面もといていくふたつまみのわかめが元気よく開いたら椀によそって いただき