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自由研究

by Azusa Yamamoto

●歩いているかと思うと、突然うずくまる。

●自転車で、信号待ち。信号が青になると「ッシャー!」という掛け声とともに立ちこぎで疾走する。

●道端の草花を眺めている。しかし、あっという間にマンションのエントランスで飼っている金魚に目が釘付けになり、次の瞬間には石ころを蹴って追う道の上。

●「お尻こちょこちょしたらどうなる?」とさけぶ。

 これらは、わたしの長年の自由研究「男子の生態」の一部です。

「男子」と思わず書いてしまったが、ちょっとちがうような気もする。対象は幼児および小学生男子。おとこのこ、と呼ぶような年頃の男子のことです。

 彼らが歩いていて突然うずくまるのは、小さな虫(だんごむしを丸める作業をせっせとしているのを見たことがある)やクルマの下の猫などを発見したからだと思われる。

 まっすぐ歩かない習性があるので、後ろから自転車で通るときなどは、徐行するのが望ましい。「後ろから通りますよ」と存在をアピールしても、まったく気づかないので徒労に終わる。

 彼らの自転車はマウンテンバイクで、ギアを軽めに設定していることが多い。たくさん漕いでも速くは進まない。だからいつも全力疾走に見える。

「この道をまっすぐ行ったらどこに着くんだろう?」という根源的な疑問を、ふいに行動にうつしたりする。自転車でふらりと出かけていつまでも帰ってこないため、ちょっとした騒ぎになっている現場に遭遇したこともある。

 近年は小さな男子のためにつくられた「キックバイク」なる、ペダルがなく足で地面を蹴って進む自転車にまたがる姿もよく見かける。が、幼児だからといって、安心はできない。彼らの勢いもまた、相当のものである。未発達なハンドルさばきで、突進してくることも。

 また、石が好き。大きな白い石を指さして「これはコンクリートの塊だね」と言う子がいた。たしかにコンクリートの塊っぽい石だった。好きなものに対する観察力・集中力は高め。

「お尻こちょこちょしたらどうなる?」は、父親に投げられた素朴な質問のようだ。後味残る哲学的かつ、秀逸な問いである。

 そして、忘れてはならないのが、電車の知識。車窓からの眼差しは鋭い。座席で車窓に向かうときに靴を脱ぐ男子が好きだ(あ、いよいよ好きと認めてしまった、具体的には一緒にいる大人もセットで好き)。「あれは○○線の〇〇系だね」と3歳くらいの子が車体の分類を口にする。前述の通り、好きなものに対する観察力・集中力が高いため、オタク道を極める傾向もあると見受ける。

 このような不可解で予測不能な男子が好きで、その生態をこっそりと収集している。が、気づいたことがある。

いまのおじさんたちも負けずに男子だということに。

 この夏は暑かった。暑すぎた。テレビで繰り返される「危険なレベルの暑さ」の言葉にひっぱられ、夏が嫌いになっていた。

 そこに高知に住む仲よしのKさんから「この夏も素敵な夏にしましょうね!」とラインが入った。動画がついている。清流・仁淀川に飛び込んだり、勢いよく流されたりしている。Kさんもイカシタおじさんであるが、動画にちらりと写っている人もまた、おじさんたちである。おじさんたちが全力で遊んでいる。「川ガキ」ならぬ、なんとやら。

 この動画のおかげで、夏の楽しみを思い出し、取り戻したところが大きい。これは男子のようなおじさんたちによるものである。

 最近の話。自転車ですこし遅めの帰宅中のこと。造園のための畑の道を、スーツ姿のおじさんが向こうから一輪車でやってきた。この未知との遭遇も、この夏の奇跡だった。

 不可解で予測不能なおじさんたちというと、語弊があるかもしれないが、おじさんもご機嫌に元気でいてくれないと困る。おじさんがおじさんヅラすると、急につまらなくなる。「家族を守る」がいつの間にかすり替わり、経済とか権利とかルールとか言い出す。それはわたしの研究の対象外であるから、もっと男子でお願いしたい。

 そして、研究は続く。

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