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#私とUbdobe

by Azusa Yamamoto

 この人をどうやって見つけたのかは、覚えていない。

 雑誌の編集者をしていたとき、取材をさせてもらったのが「はじめまして」だった、たしか。

 NPO(特定非営利活動法人)という方法で組織を運営する方々を招いて座談会をしてもらった。その中のひとりがこの人だった。「ヤングNPOリーダー座談会」。2013年の大雪の降る日に取材をした。

 仕事の必需品をそれぞれ拝借して撮影をし、誌面構成を考えて……なんてことをしたような気がするが、仕事の記憶はほんのすこししかなく。

 覚えているのは、渋谷の中華屋でギターをかき鳴らす若者と肩を組んで歌ったこと。雪降る都会の真ん中でキャンプファイヤーを共に囲んだような夜は、この取材の後だったんじゃないかしら。餃子とビールが美味しかった。

 渋谷の中華屋も、ギターをかきならす若者も、みんなこの人の導きによって出会うことができたのだった。

 この人こそ、Ubdobe(ウブドべ)代表の岡勇樹氏。

 Ubdobeが何をやっているか、実はよく知らない。さんざん取材させていただいたのに……。ごめんなさい。

 印象的だったのは、認知症になった岡さんのお祖父さまに、ヘッドホンをかぶせ音楽を聴かせたという話。お祖父さんの目がみるみる輝いて、リズムに合わせて「縦ノリ」したそうだ。岡さんはいま、ありとあらゆるアプローチでもって、音楽やアートと医療・福祉をつなぎ合わせる活動をしている。

 フリーランスになったわたしに、すぐに連絡をくれたのもこの人。神奈川県・愛川町の介護老人福祉施設『ミノワホーム』のコンセプトブック「おせっかいごブック」を一緒につくった。職員さんたちに協力してもらい、愛川町のこと、仕事のイロハ、死との向き合い方、ひとりずつにじっくりと語ってもらった。この仕事で、取材のしかたが大きく変わった。

「取材相手と一緒につくる」

 その地域に住み、働く人たちのことばで、土地のことや職場のことを紹介する。こちらが一方的にインタビューしてまとめるのではなくて、編集会議のネタ出しから一緒にやる。行き当たりばったりかつ関係づくりが重要な取材になるけれど、いまはこのプロセス重視な方法でもって、Ubdobeといくつかのプロジェクトをやっている。

 北海道・十勝での取材もそのひとつ。初めて認知症のおばあちゃんにインタビューした。これまでにない楽しい取材の時間だったから、「認知症のおばあちゃん」から一気に「年上のユニークなお友だち」となる。そして、インタビューはお互いが楽しむおしゃべりである、という基本的なことを教わった。

 沖縄の離島(伊平屋島・久米島・西表島・石垣島)をまわったときは、商店街や市場、民家にどんどんと入っていって、顔なじみのおじいやおばあ(それも100歳超えの)と親しく話をしている福祉職員さんたちを見て、鳥肌がたった。伝える仕事をしてきたわたしでは、絶対にできないシーンを目の当たりにした。

「まちづくり」とか「地域の歴史をいまに」とかいう旗印を掲げる前から、フクシ(Ubdobeと出会って福祉が身近な存在になって、カタカナ表記にしている。そういえば)に関わる人たちは、日常のこととしてやっている。わざわざスローガンを叫ばなくても、フクシは暮らしの中からいろんなことを教えてくれる。だから、どんなガイドブックよりも特別で、すごいものができあがる。

 Ubdobeはわたしにとって、持っているチカラを175%発揮させてくれるパートナーです。十周年、おめでとうございます。これからもよろしくお願いします(DESTROYと描かれたキャップ被って充血した目で「200%にせな、ヤーマン」は、ご勘弁を)。

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