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by Azusa Yamamoto

 新年おめでとうございます。今年は昨年より間を詰めて、ここに綴っていきたいと思っています。

 昨年末は友人が家に遊びに来てくれ、久しぶりにおしゃべりして過ごしました。

 この友人を紹介させてください。彼女「あおちゃん」。姓はコクボさんです。姓にも名にも「あお」の字は見当たらず……。

 あおちゃんに初めて会ったのは、『三鷹天命反転住宅※』で開催された建物見学会だった。「死なないための住宅」というコンセプトで芸術家・建築家の荒川修作とマドリン・ギンズが造ったキテレツなマンションの一室で、わたしと同様にひとりで見学会に臨んでいた少女がいた(当時もいまも、あおちゃんは少女のような人です)。緑色のアクリル絵の具をべったりと塗りましたというような球体の部屋のなかで、あおちゃんは、いた。どこを向いても、緑・ピンク・黄色・赤と、強い色が目に入ってくる。この色彩の刺激や空間の湾曲、凸凹に、ジャングルの中の冒険家といった感覚にさせられ、「死なない」のだとか。係の人がそんなふうに説明していたと思う。そんな過多な色彩のなか、静かな湖畔の森の影でブランコを漕いでいたのがあおちゃんだった。

「青色が好きだから」という理由でこのひとをわたしは「あおちゃん」と呼んで、5年。そのころに住み始めたわたしの住まい「平屋」に何度も遊びに来てくれている。『三鷹天命反転住宅』にかけて、「天命全う住宅」なんていって、冬は極寒、夏は猛暑の我が家の暮らしを一緒に楽しんでくれる数少ないひとりなのです。

 実はこの年末は、きつかった。仕事をこなしきれないでいる中、いろんな事情やタイミングが重なり、ひとつひとつの仕事に対しても、向き合う人との関わり方に対しても、「何か違う」と思っていた。それを認めたり、必要な相手に伝えたりする体力もなく、人と仕事をすることにくたびれていた。

 辛かったこと、理不尽だと感じたこと、できなかったことをひとつひとつ、あおちゃんは聞いてくれた。全部聞いたあとに、一言。

「あずちゃんは、水が好きなんだね」

 ……。

 2018年夏に行った長崎は五島の海。そこに吸い寄せられるようにして服のままどぶんと入ったときの話を、あおちゃんはしているのだ。

「水が好きなんだね」と言われて気がついたのだが、あの瞬間は昨年一番の幸せだったかもしれない。青い海と空に挟まれ、水の揺れにまかせてただ浮いていたあの時間は、自己も社会も世界も、全部が一緒になっていた。

 好きなこと、心地がいいことも忘れてしまっていたわたしに、五島の海を、空を、水の中に入ったときのあの音を、すくって持たせてくれた。

 不思議なこの友人は湯たんぽを抱え、みかんの山に手を伸ばす。

「そうよ。あずちゃんは、水が好きなんだよね」

***

三鷹天命反転住宅……三鷹市大沢に建つアート作品&住宅。——9戸の集合住宅は、内外装に十四色の鮮やかな色が施され、一部屋一部屋の色の組合せが全く異なる——。なので、一度前を通った人は二度見する。

(引用:三鷹天命反転住宅について

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